「Godfather」という映画をご存じでしょうか？1972年に公開されたアメリカ映画で、三部作です。マフィアを扱った映画で暴力や銃撃のシーンもありますが、多くの方が最高の映画と評価するでしょう。マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロなどの名優がたくさん出演しています。そして、監督はフランシス・フォード・コッポラです。

封切られたとき、私は13歳だったため見ることはできませんでしたが、高校生時代にリバイバルで見た覚えがあります。非常に感動し、マフィア映画というよりも「家族」の物語であると認識しました。DVDを購入して以降、毎年1～2回は三部作を見ています。

昨年の11月、東京在住の医師の方から電話がありました。内容は、コッポラ監督の知人が胸腺腫（T細胞を教育する胸腺という臓器の腫瘍）に罹患し、治療方法を探しているというものでした。私は大学時代から胸腺腫の診断治療および研究をしていましたが、最初は新手の詐欺ではないかと疑いました。私がコッポラ監督を大好きであることをどこで知ったのか、不思議でした。

2回目の電話では、私が治療法を日本語で書いてくれたら、英語字幕翻訳家の戸田奈津子さんに英訳してもらうからよろしく、ということでした。あの翻訳家で有名な戸田奈津子さんも出てきたため、大規模な詐欺だと疑いました。

日本肺癌学会に参加するため近日中に東京に行く予定があり、その際に東京で会食をすることが決定しました。会食会では、本当の戸田奈津子さんに会い、映画に関する楽しい会話をすることができました。その後、胸腺腫の治療法を日本語で書き、e-mailで戸田奈津子さんに送りました。コッポラ監督からの疑問点や質問にも詳細に答えました。

コッポラ監督からは、直筆サインのある「ゴッドファーザー」50周年記念のDVDが送られてきました。残念ながら治療は十分な効果が得られず、良い結果にはなりませんでしたが、今回の出会いで“縁”というものを強く感じました。これからも医療人として、患者さんとの一期一会の出会いを大切にしていきます。

江藤病院院長　近藤和也