風邪やインフルエンザ・コロナウイルス感染症にかかると、私たちは「熱が出たから早く下げなきゃ」と考えがちです。しかし実は発熱は身体が自らを守るための重要な防御反応なのです。今回、発熱のメカニズムとその意外なメリットについて知ってもらいたいと思います。
発熱はなぜ起こるのか?
発熱の仕組みは、体内のサーモスタット(温度調節機能)である脳の視床下部が関係しています。ウイルスや細菌が体内に侵入すると、免疫細胞がそれを感知し、サイトカインという物質を放出します。このサイトカインが視床下部に「体温を上げろ!」という指令を出します。その結果、体温が上昇し、発熱が起こります。
では、なぜ身体は熱を上げようとするのでしょうか?
発熱の意外なメリット
1. 免疫機能の活性化
体温が上がると、白血球やリンパ球といった免疫細胞が活性化し、ウイルスや細菌と戦う力が強まります。またインターフェロンという抗ウイルス物質の分泌も促進されるため、感染症の回復が早くなることが知られています。
2. ウイルスや細菌の増殖を抑える
多くのウイルスや細菌は37℃前後で最も活発に増殖します。しかし、38℃を超えるとその活動が鈍くなるため、身体は発熱によって敵の動きを封じ込めようとしているのです。これはまさに身体が自ら行う「自然の抗生物質」とも言えます。
3. 代謝が上がり、回復が早まる
体温が上がると血流が良くなり、酸素や栄養素が細胞に行き渡りやすくなります。その結果、細胞の修復や老廃物の排出がスムーズになり、回復が早まります。
発熱時にやるべきこと、やってはいけないこと
発熱があるときの正しい対処方法
◎やるべきこと
・水分補給をしっかりする(汗をかくため脱水を防ぐ)
・安静にして身体を休める(無理に動くと回復が遅れる)
・適度に身体を冷やす(脇の下や首を冷やすと楽になる)
❌やってはいけないこと
・無理に解熱剤を使いすぎない(熱は身体の防御反応なので、むやみに下げると回復が遅れる)
・厚着をしすぎない(汗をかきすぎると脱水症状のリスクが上がる)
・食べすぎない(消化にエネルギーを使うより、免疫力を高めることが優先)
発熱は悪いことではない!
「発熱=悪いもの」と考えがちですが、実は身体が自分を守ろうとする自然な防御反応です。熱があるからといってすぐに薬を飲むのではなく、十分な休息や水分補給・栄養補給といった身体の回復を助けるような対応をすることが大切です。ただし、高熱が続く場合や、意識障害・呼吸困難などの症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
医療療養病棟 主任看護師 脇岡真司