はじめに
これまで、このリハビリテーション通信では、肩の痛みに対して自宅でできるセルフケアとして「棒体操」「コッドマン体操」などの肩や肩甲骨の運動を紹介してきました。
今日は、それらの運動の効果をさらに引き出すための「プラスアルファ」の肩甲骨の運動をお伝えしたいと思います。
前鋸筋は肩甲骨を支える強力なサポーター
腕を上げるとき、肩の関節だけで動かしていると思っていませんか?実は、腕をスムーズに上げるためには、背中にある肩甲骨が土台としてしっかり安定していることが必要不可欠です。
その肩甲骨を、しっかりと肋骨にピタッと固定してくれている筋肉。それが「前鋸筋(ぜんきょきん)」という筋肉です。
前鋸筋の作用とは?
肩甲骨のグラつきを抑えるストッパー
前鋸筋が弱くなると、肩甲骨が背中から浮き上がってしまい(翼状肩甲骨など)、土台がグラグラになります。ぬかるんだ地面で重い物を持ち上げようとするのが大変なのと同じで、土台が不安定だと肩の関節に余計な負担がかかり、痛みやだるさの原因になります。
腕を上げる時のレールを整える
腕を上げるとき、肩甲骨は外側にクルッと回転します。前鋸筋はこの回転をスムーズにガイドする役目を担っています。前鋸筋が働かないと、肩の骨同士がぶつかってしまう「インピンジメント」という状態になりやすく、これが四十肩・五十肩のような痛みを引き起こすことがあります。
前鋸筋のトレーニング
① 前ならえ押し出し運動(肩の前方突出)
椅子に座ったまま(立った状態や仰向けでもOK)、家事や仕事の合間にできる運動です。
「前ならえ」をするように、腕を前に伸ばします。
肘を伸ばしたまま、「あと3センチ遠くに伸ばそうとする意識」で指先を伸ばします
脇の下に力が入るのを感じたら、ゆっくり戻します。
※間違ったやり方
注意点: 肩が耳に近づかないよう(肩をすくめないよう)に気をつけましょう!
② 四つ這い床押し運動
四つ這いになり、両手を肩の真下につきます。
肘を伸ばしたまま、床をグーッと手のひらで押し込み、背中を高く上げます。
肩甲骨が外側に広がっていくのを感じたら、ゆっくり戻します。
おわりに
「継続することが大事」
筋肉は、衰えるスピードが非常に速いのが特徴です。運動を3日休むと、取り戻すのに1週間かかると言われることもあります。続けられない最大の原因は目標が高すぎることです。まずは目標を低く設定し、「頑張りすぎないこと」が、継続の最大のコツです。「今日は前へならえ運動もしくは四つ這い運動を1回だけやる」だけでも、それは立派な継続です。無理なく、楽しみながら運動を習慣にしていきましょう。
【今回の執筆者】理学療法士 伊澤 一之(いさわ かずゆき)
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