リハビリテーション通信|嚥下障害
今回の「リハビリテーション通信」では「嚥下障害」についてお届けします。
嚥下障害とは
①飲食物を認識し、②口に取り込んで飲み込みやすくし、③口から喉へ、④喉から食道へ、⑤食道から胃へと送り込む5つの過程のどれかに異常が起こることを「嚥下障害」といいます。嚥下障害になると、飲食物を摂取することができなくなることにより脱水症や栄養不良、食べる楽しみの喪失に繋がります。また、飲食物が誤って肺に入ることにより、誤嚥性肺炎という疾患を引き起こすこともあります。
嚥下障害の原因
嚥下障害は、これまで主に脳卒中による後遺症として起こるものと考えられてきました。しかし、超高齢社会となるにしたがって、近年では脳卒中を起こしていない高齢者の嚥下障害が増加しています。様々な恒常性の低下といわれる「フレイル」や、加齢により筋肉量が減少した状態である「サルコペニア」も嚥下障害の原因となります。「フレイル」「サルコペニア」により歩けなくなったりつまずいたりすることと同じように、飲み込みにくくなったり誤嚥性肺炎を発症したりします。つまり、嚥下障害は年齢を重ねるに伴って誰にでも起こりうる障害といえます。
※「フレイル」「サルコペニア」は来月のリハビリテーション通信で詳しくお知らせします!
嚥下障害の徴候
- 痩せてきた
- 物が飲み込みにくい
- 食事中によくむせる
- のどに食べ物が残る感じがする
- 口から食べ物がこぼれる
- 口の中に食べ物が残る
- 声がかすれてきた など
当院でできる嚥下評価
嚥下評価では、嚥下能力を精査して個々の問題を明らかにし、訓練や対処法を導き出すための検査や観察を行います。当院でできる嚥下評価には次のような種類があります。
スクリーニングテスト | 簡便な質問や検査で嚥下能力を評価します。 |
舌圧測定 | 小型の機械を使用して、舌でバルーンを押しつぶすことで舌の筋力を測定します。舌の機能は食べる機能と関連しているといわれています。 |
嚥下造影検査 | 嚥下関連器官の運動と造影剤の移動をX線透視下で観察する検査法です。嚥下機能検査のゴールドスタンダードとされています。 |
嚥下障害の治療・リハビリテーション
嚥下障害に対する一番のリハビリは食事を行うことです。そのため、嚥下能力を詳細に評価し、できる限り安全に食事を摂ることが大切です。食べ方や食物の形状、食事姿勢を少し変えるだけで安全性は大きく変わることがあります。安全に食事を摂りながら、併行して嚥下の力を回復させていく訓練の提案を行います。
リハビリスタッフからのメッセージ
病気によって起こる嚥下障害は自覚しやすいことが多いですが、加齢による嚥下障害はゆっくりと進行していくため自覚に乏しい傾向があります。チェックテストを行うと40歳代でも嚥下障害が疑われる場合があります。様々な病気と同様に、嚥下障害も早期発見、早期治療が有効です。前述した徴候など気になることがある場合は、お気軽に当院へお問い合わせください。
次回は「嚥下体操」をご紹介します。ぜひご覧ください。