転倒とは
「歩行や日常生活などの動作時に、意図せずつまずいたり滑ったりして、床・地面もしくはそれより低い位置に手やおしりなどの体の一部がついたすべての場合(ケガの有無、暴力などの外力、自転車などの乗り物での事故は除く)」と定義されています。
転倒の要因
転倒には、防ぎきれるものと防ぎきれないものがあり、予防するためには、できる限り転倒要因は取り除いておくことが重要です。転倒の要因は、身体機能など内的要因と家屋、道路、ベッド周りなど環境などの外部要因があります。
転倒予防の目的と介入の具体例
転倒予防を考えるとき、2つの目的があります。
1.転倒そのものを減少させること
2.転倒にまつわる諸問題(骨折、転倒後に外出を恐れるなどの心理的問題など)を低減させること
転倒予防のための介入の具体例
1.心身機能を改善する介入
筋力や関節の動き、目の動きなどの低下した機能を高めることによって転倒予防が期待できます。
・セルフトレーニング(集団や個別でのウェイトトレーニング、歩行訓練など)
ゆっくり立ち座りするトレーニング。10回を目安にしましょう。
太ももをしっかり上げる運動です。可能なら両手をしっかり振りましょう。10回が目安です。
リズム良く階段をあがって、おります。目安は10分程度です。
・各種の体操教室(ヨガ、太極拳など)
2.活動能力を高める介入
対象者が以前とは異なる安全な動作を獲得することで転倒予防を目指す介入です。
例えば、階段昇降の方法を安全な方法に変更する、杖などの補助具を使用して外出するなど、代償的な方法といえますが、活動や参加の機会を増やすことは心身機能を高め、本人の自信や家族の安心にも繋がります。
・移乗・移動の安全指導
車椅子の移乗
階段
階段を下りる時は、弱いほうの足から先に出します。(片足でふんばれない場合)
階段を上がる時は、強いほうの足から先に出します。(片足でふんばれない場合)
・補助具、車いすの整備
3.環境を整備する介入
手すりの設置、段差の解消、滑り止めマットを敷く、照明を明るくするなど転倒につながる物理的環境因子を除去して転倒予防を目指す方法、家族や関りを持つ方に対して転倒予防に対しての教育を行うことも転倒リスク低減に有効です。
・リハビリスタッフによる家屋調査や改修指導
・家族や関りを持つ方に対しての転倒予防教室の開催
・ベッド周りにピクトグラム(絵文字、絵単語)などによる転倒注意を促したカードなどの設置
4.認識を高める介入
対象者に転倒の生じる原因や生活上の注意点などを伝える教育的方法です。対象者自身のリスク認知を高めることは、未然に回避する有効な手段となります。
・転倒予防教育
・骨折等リスクに関する質問紙調査
リハビリスタッフからのメッセージ
転倒が引き起こす問題を分かりやすく下の図に示します。
転倒予防をするのであれば、「何もしなければ良いのでは?」とのご意見もあります。
もちろん、動くことがなければ転倒することはありません。そうなると、転倒を恐れ日中から臥床傾向となり、筋力の低下や知的能力の低下を引き起こす「負の循環」に陥りやすくなります。
毎日自立した生活を続けること、楽しみを持って生きることこそがご本人、ご家族の「よりよく生活を続ける」ことにつながり、「正の循環」を作ることだと考えています。
次回はご自宅でも行える棒体操を用いて、心身機能を改善する介入をご紹介させていただきます。