わたしが江藤病院にお世話になり、早いものでもう27年が過ぎました。前職は公務員。保健師として家庭訪問をしていましたが、ある本をきっかけに、自分が看護職として身を置くべきなのは、訪問看護なのではないかという想いに突き動かされ、江藤病院で在宅医療をと、入社させていただきました。それからのこの27年間、
たくさんの方々との出会いと別れがありました。
文字盤で「し、あ、わ、せ」と指差した、死にゆく花嫁Aさん。
最期の自宅退院で、念願の自宅風呂に浸かった時のBさんのあの声と表情。
いつもは嫌でたまらない認痴症状なのに、庭で出た排泄が今日は信じられないくらい巨大だと、大笑いで見せてくれたCさんの妻。
ALSが進み介護が辛くなる中、大好きな氷川きよしの歌に、Dさんの表情が動いた奇跡。
1人で最期までアパートで過ごした、若い独り暮らしのEさん。
もう一度漁場を、と、車椅子で海を見に行ったFさんの最期の春。
深夜の訪問では、たぬきの家族に遭遇したなんてこともありました。
想い出は尽きません。
在宅では、自分が決めたように生きていける場所です。病気の為に娘さんの家に間借りしていたのに、訪問時に自分の家にどうしても帰りたいと譲らず、その日のうちに転出に至った方がありました。周囲にはわがままに映るかも分かりませんが、どう生きていきたいのか、そこに寄り添う訪問看護でありたいと思っています。
選んで在宅。やむ無く在宅。
どちらも、これで良かったとなりますように。
27年前、訪問看護師に転向した事は間違っていなかった。
来年、またどのような皆様に出会えるか、楽しみにしています。
本年も大変お世話になりました。皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
【執筆者】
南部訪問看護ステーション
管理者 生田聡子