はじめに
言語聴覚士のリハビリアプローチとして、「専門的口腔ケア」があります。口腔機能の回復や誤嚥性肺炎の予防など、全身の健康を考えたケアのことで、毎日自分で行う口腔ケアよりも治療的なケアになります。その最も重要な点は舌の状態をよく診ることだと考えています。
東洋医学では「舌診(ぜっしん)」と言われ、舌の色と形、舌苔、舌裏の血管を見ることで体調を知る診断があります。
健康のバロメーターでもある舌を確認してみましょう。
舌の色
舌の色は血流や体温、内臓の健康状態を表します。
・ピンク色:血流が良く、バランスの取れた健康的な状態
・白っぽい: 貧血、冷え、消化不良の可能性
・赤すぎる: こもり熱、炎症やストレスの兆候
・紫色: 血行不良、ストレス、心肺機能の低下
・黄色:胃腸の不調や肝機能の低下
舌の形
舌の形も体内の状態を反映します。
・むくんで大きい:水分バランスの崩れ、腎機能の低下、栄養不足
・厚く膨らんでいる:消化器系の不調、栄養過多、甲状腺機能の低下
・ひび割れ:栄養不足、水分不足
舌苔(ぜったい)
食べかす、細菌、唾液、粘膜の古い細胞などが混ざり合ってできるもので、健康な状態ではうっすらと白く薄くついている程度です。舌苔には口の粘膜を保護する役割がありますが、量や色が異常に変化する場合は口内環境や全身状態悪化のサインかもしれません。
・白い苔:免疫力の低下、消化不良、貧血、ドライマウス
・黄色い苔:胃酸過多、肝機能の低下
・黒い苔: 喫煙や抗生物質の影響、カンジダ菌の増殖
舌の動き
舌の動きは脳の神経によってコントロールされています。
・舌の動きが悪い:脳卒中の可能性
・舌が震える:自律神経の乱れ(ストレスや不安)、甲状腺機能の異常、パーキンソン病など神経疾患
冒頭で述べた通り、リハビリテーションを行う際には舌を含めた口の中の状態を確認することが多くあります。これらの観察点は全身状態を反映するものなので、そのときどうなのかというよりは、昨日と比べて/数日前と比べて変化を確認することが重要だと考えています。適切な口腔ケアが行われ舌がきれいになってくると、全身状態安定のサインと捉え、より積極的なリハビリテーションに切り替えていきます。
体調不良は早期発見、早期対応が重要です。舌の状態確認は、毎日数秒でできます。自分の体調と照らし合わせ、必要であれば生活習慣を見直してみましょう。
舌の色や形に異常が続くようであれば、気になる症状の検査を受けてみましょう。舌の動きが明らかに悪い場合は急いで病院受診してください。

「喉まで出かかっているのに名前が出てこない」ということが増えました。こういった現象を心理学用語で「Tip of the tongue phenomenon(舌先現象、舌端現象)」と言います。フランス語から由来しているそうで、日本語よりも前まで出ている感覚のようですね。加齢が影響するとされていますので、抗っていきたいと思います。
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