江藤病院リハビリテーション部がお届けしている「リハビリテーション通信」。今回は当院で受診が増加している「肩こり」についてです。
肩こりとは
首と肩の周辺には、さまざまな筋肉があります。これらの筋肉は、立っているだけでも重い頭や腕を支えて緊張し続けています。肩こりに関係する筋肉はいろいろありますが、首の後ろから肩、背中にかけて張っている僧帽筋という幅広い筋肉がその中心になります。
緊張が続くと筋肉が疲れて疲労物質がたまり、硬くなります。硬くなった筋肉が血管を圧迫して血液の循環を悪くしたり、末梢神経を傷つけたりして凝りや痛みを起こします。また、硬くなった筋肉の圧迫により血行不良を起こしてしまうと、筋肉にも十分な酸素や栄養が供給されず、疲労がたまり、ますます筋肉が硬くなってしまいます。この悪循環により肩こりが慢性化します。
症状
首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけて、張った、凝った、痛いなどといった感覚があり、頭痛や吐き気を伴うこともあります。
原因
首や背中が緊張するような姿勢での作業や偏った姿勢を長時間にわたって続けていると、筋肉が疲労して肩こりが起こりやすくなります。
■ デスクワークなどで長時間同じ姿勢をとっている
■ いすと机のバランスが悪く、偏った姿勢を続けている
■ ショルダーバッグなど、かばんをいつも同じ方の肩にかける
■ 長時間冷房の効いた部屋にいて体が冷えている
■ 精神的ストレス
■ 運動不足
■ よくない姿勢(猫背・前かがみ)
このほか、頚椎疾患、頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患の随伴症状としての「肩こり」も少なくありません。
診断
問診や神経学的診察、特に触診で僧帽筋の圧痛と筋緊張、肩関節可動域や頚椎疾患のチェックなどで診断します。X線(レントゲン)撮影のほか、必要によりMRI、筋電図、血圧測定などの検査も行います。
治療
■ 肩の体操 (詳細はこちら!)
■ マッサージ (筋肉の血流を改善させ、筋緊張をやわらげる)
■ 温熱療法 (蒸しタオル、入浴などで筋緊張をやわらげる)
■ 運動療法 (筋力強化)
■ 安静
■ 薬物療法 (湿布薬、筋弛緩薬、局所注射など)
予防
肩こりを予防するためには、首や肩の筋肉に緊張が続かないよう、正しい姿勢を保ち、普段から体を動かすように心がけましょう。
■ 正しい姿勢を習慣づける背骨のS字カーブを意識しながら、正しい姿勢を保つようにしましょう。
例えば、猫背のように頭の位置が前に出ると、頭の重心も前に移動します。机に向かって首を前に曲げ、手先の仕事を長時間行うことなども、同様に頭の重心を前方に移動させたままの姿勢を続けていることになります。このとき、肩や首の筋肉は、正常な姿勢のときと比べると大きな負担を受けています。常日頃から背筋を伸ばし、首・肩の筋肉をリラックスさせる姿勢を保つようにしましょう。
また、長時間前かがみの姿勢で作業を続けるときは、ときどき休憩して、首を回す、肩を動かすなど、筋肉をほぐすようにしましょう。
■ 運動・スポーツで、筋力アップや気分転換を心がける運動やスポーツで肩のまわりの筋力をつけ、頚椎、肩関節をよく動かすよう心がけましょう。
水泳、バレーボール、テニス、エアロビクス、ヨガなど、全身を動かすものがおすすめです。そのほか、精神的な緊張をほぐし、ストレスを軽減することも肩こりの解消には有効です。軽いジョギングやウォーキングなど、気分転換を図りやすい運動を定期的に取り入れてみましょう。
リハビリスタッフからのメッセージ
日々の生活の中で肩こりを感じたとき、あなたはどのように対処していますか? たかが肩こりと放っておくと、頭痛や吐き気、めまいといった全身の不調につながる可能性もあるので、早めの対処が必要です。今回は、肩こりについて一般的な情報を掲載してみました。日々の対策にぜひお役立てください。次回は、肩こり体操についてお届けします。