当院のボツリヌス療法
江藤病院リハビリテーション部がお届けしている「リハビリテーション通信」。前回は「ボツリヌス療法」についてお届けしました。<前回の記事はこちら>
今回は、「当院におけるボツリヌス療法の実際」についてご紹介します。
当院のボツリヌス療法のすすめ方
①診察
医師の診察によって、ボツリヌス療法を受けられるかどうか判断します。
②目標設定
「何に困っているのか」「何をできるようになりたいのか」など、ボツリヌス療法を実施する医師と相談して目標を設定し、治療計画を立てます。
施術する部位(手のみ・足のみ・手足ともに)についても決定します。
③施術前評価
リハビリスタッフが、身体の状態を確認させていただきます。確認内容は、関節の動き・痙縮(手足のつっぱり)の程度・(歩行可能な方は)歩行中の動作などです。
④初回の治療と施術直後の評価
痙縮のある筋肉に薬を注射します。施術直後、リハビリスタッフが③と同様に身体の状態を確認させていただきます。
⑤受診(1~2回)と施術後評価
一定期間後、再度受診していただき、治療後の症状や身体状態について、リハビリスタッフが③と同様に確認いたします。ボツリヌス療法を実施した医師と相談しながら、次回治療の必要性を決定します。
⑥2回目の治療
経過観察を経て必要性がみられる場合は、2回目の治療を行います。以降は経過観察と治療を繰り返します(治療の間隔には個人差があります)。
注射する部位
痙縮のみられる筋肉に注射します。注射部位は患者さんによっ1て異なります。一か所の場合や、一度に数か所に注射をする場合もあります。
<手(上肢)の主な注射部位>
<足(下肢)の主な注射部位>
ボツリヌス療法の副作用
ボツリヌス療法を受けた後に、副作用として次のような症状があらわれることがあります。これらの症状は多くが一時的なものですが、症状があらわれた場合には医師にご相談ください。
・注射部位がはれる、赤くなる、痛みを感じる
・体がだるい、力が入らない、立っていられない
ごくまれに次のような症状があらわれることがあります。これらの症状があらわれた場合には、すぐに医師にご連絡ください。
・吐き気がする
・呼吸が苦しい
・全身が赤くなる
・物が飲み込みにくい
・けいれんが起こる
この他にも、ボツリヌス療法を始めたあとに、何かいつもと違うなと感じることがありましたら、医師にご連絡ください。
ボツリヌス療法の費用
ボツリヌス療法は保険が適応されますが、注射薬そのものが非常に高価なため、医療費が高額になる場合があります。具体的な費用の程度は、投与量や自己負担の割合によって金額が異なりますが、3割負担の方で約20,000円~80,000円となります。身体障害者手帳の受給者証をお持ちの方で、現在医療費が無料の方は、自己負担がありません。
ボツリヌス療法 Q&A
Q.ボツリヌス療法で痙縮は完全に治りますか?
A.ボツリヌス療法により、痙縮そのものが治るわけではありません。治療によって痙縮がやわらぎ、日常生活動作やリハビリテーションを行いやすくなることが期待できます。
Q.ボツリヌス療法はずっと続けなければなりませんか?
A.ボツリヌス療法の効果持続期間は通常3~4ヶ月間で、効果は徐々に消えていきます。治療を止めると痙縮は元の状態に戻ってしまいますので、年に数回、繰り返しボツリヌス療法を受けることが望ましいでしょう。治療間隔や治療期間は人によって異なりますので、医師と相談してください。
Q.ボツリヌス療法を受ければ、リハビリテーションは行わなくてもよいですか?
A.ボツリヌス療法によって痙縮がやわらいでも、リハビリテーションを行わなければ機能の回復は望めません。リハビリテーションはそのまま継続してください。リハビリテーションをボツリヌス療法を一緒に行うことによって、日常生活動作などをより行いやすくなることが期待できます。
Q.ボツリヌス療法を受けたあと、日常生活上の制限はありますか?
A.注射当日は、注射部位をもむ、入浴、激しい運動などは控えてください。注射の翌日以降は、特に日常生活上の制限はありません。
リハビリスタッフからのメッセージ
2回にわたりご紹介させていただいたように、当院では医師の指示のもと、痙縮により日常生活上の困難を抱えている方にボツリヌス療法を実施しています。患者様から「手足が前より動かしやすくなった」と感想をいただいたり、ご家族から「着替えや排泄のときの介助がしやすくなった」など、効果を実感していただけています。興味のある方は、当院リハビリスタッフまでお問い合わせください。