リハビリテーションとマッサージは違う?|インタビュー編
「地域の皆さんともっとつながりたい!」という気持ちからはじまった「リハビリテーション通信」。前回に続いて、リハビリテーション部スタッフへのロングインタビューをお届けします。
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<前回のインタビュー記事はこちら>
登場するのは回復期リハビリテーション病棟を担当している理学療法士のリーダー2名。副主任 湯浅雅史さんと松本将樹さんです。
-リハビリテーション部には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士という国家資格者が在籍しています。違いは?
湯浅・松本 理学療法士は、歩く・立つ・座るなどの日常生活で基本となる身体機能の回復を支援します。
作業療法士は、日常生活におけるすべての活動=作業における動作の改善や維持を支援します。理学療法士は基本的な運動機能が対象で、作業療法士は基本的な運動機能の先にある活動=作業を対象としています。
言語聴覚士は、話す・聞く・食べることに特化しています。発声方法・食べ物の飲み込み方の指導などを行います。
-理学療法士を目指したきっかけ
松本 高校3年生のとき、「これがしたい!」というものがなくて進路に迷い、色々な道を模索していました。親から理学療法士という仕事があるのを聞かされてから詳しく調べているうちに、自分の祖父母にもいずれ関係しそうな仕事だなと興味を持ったのが始まりです。学校の実習で患者さんに関わるようになってから、理学療法士に絶対になりたい、と強く思うようになりました。
湯浅 友人から勧められたのがきっかけです。大学で工学系の勉強をしていたのですが、本当は医療系に進みたかったという思いが断ち切れず、受験し直そうと思っていたところ、理学療法士になるための専門学校に通っていた友人から「向いてるよ!」と言われて、「じゃあ受けてみよう」となり、現在に至ります。対人が苦手で研究する仕事に就こうと思っていたくらいなので、向いているかどうか自分では未だにわからないのですが…(笑)
-オリンピック選手など、アスリートのケガやリハビリテーションによる復帰のニュースなどを見ると、自分ならこうするなどと考えたりしますか
湯浅 アスリートのリハビリテーションは、回リハ病棟におけるリハビリテーションとは、目的も内容も異なります。関心はありますが、自分も担当してみたい、とか自分ならこうする、という思いを抱くことはほとんどありません。ただ、リハビリテーションについて、多くの方に知っていただける機会でもあるため、アスリートのリハビリテーションについて報道がなされるのはありがたいです。リハビリテーションについて予備知識があることで、初めてリハビリテーションを受ける患者さんにとっての安心感につながっています。
-職業病だなって思うことは
湯浅 患者さんが歩いてこちらに向かってくるときから、身体の歪みや癖などについて観察を始めます。見る目を養うために、普段から多くの人を職業的な目で見るようにしていたので、日常的に人の歩く姿勢などが気になるようになってしまいました。
松本 同じように、歩き方や立ち姿を見て、気が付くと、骨のゆがみなどについて考えている自分がいます。
-マッサージとリハビリテーションの違いについて
松本 そのような質問を受けることが時々あります。色々な答え方があると思いますが、私は、マッサージは、リハビリテーションの中に含まれる手法のひとつだということをお伝えしています。先程の「リハビリテーションとは<前回記事へ>」の話の中にも、違いについてのヒントがあると思っています。
湯浅 リラクゼーションが目的の足裏マッサージもあれば、国家資格であるあん摩マッサージ指圧師によるマッサージもありますので一括りにして言えないところもありますが、医師の診断に基づく治療か、健康保険が使えるか否か、元の状態に近づけるという目的のための計画的な方法か、などの「違い」は実際のところ、あります。しかし、手法として捉えた場合、マッサージはリハビリテーションという大きなくくりの中のひとつだと捉えることができると思います。
-自主練習=宿題を出すのはリハビリテーションだけ!?
松本 宿題、ですか(笑)痛みや筋肉の緊張を和らげたり、膝が曲がるようになったり、できなかった動きができるようになったりすることは、マッサージにもリハビリテーションにも共通することかもしれません。しかし、リハビリテーションでは、元の生活に近い状態に戻れるように、机と椅子の高さ調整のお話もしますし、普段の歩き方や座った時の姿勢、負担の少ない立ち方などが定着するように日常でも心がけてくださいね、とお伝えしたり、できるだけ短い期間で目標を達成できるよう自主練習を提案したりしています。
湯浅 リハビリテーションでは、自立して元の状態に近い生活に戻っていただくことが目的です。できるだけ、自主練習にも取組んでいただけたほうが、目的に到達しやすくなると思います。とはいえ、回リハ病棟では、患者さんに各病室で自主練習に取り組んでいただくことになりますが、入院中であっても、自主練習の定着は難しいんですよ。リハビリスタッフは、経過観察はもちろん、とっかかりが難しそうならリハビリテーション中に付き添いの上でやってもらったり、リハビリ助手さんに補助してもらったりして、自主練習することが習慣になるお手伝いもしています。不安なことがあれば、遠慮なくリハビリスタッフにご相談ください。当院では、患者さんに合わせて、理学療法士、作業療法士・言語聴覚士が専門的なリハビリテーションを実施していますし、退院後にも、外来受診でのリハビリテーションを継続していただけることはもちろん、通所・訪問でのリハビリテーションも行っています。
-リハビリテーションと心のケアについて
松本 リハビリテーションの時間は、概ね20分~1時間程度ありますので、医師や看護師よりも、リハビリスタッフは担当患者さんと比較的長い時間、関わることが多いんです。その間、お話をお聞きするのもリハビリテーションのひとつかな、と思うところがあります。また、患者さんやご家族は私よりも人生の先輩であることがほとんどですから、リハビリテーションの時間は、私にとって人生や仕事について、また、人との関わり方を学ばせていただく貴重な時間にも繋がっています。
-リハビリテーションにおいて心がけていること
湯浅 その日その日で自分自身の心や身体の状態は違っていても、患者さんに対しては持てる力のベスト、ベターじゃなくてベストを出せるようにしています。ああしておけばよかったと後悔するようでは患者さんに失礼ですから、ベストなパフォーマンスを常に心がけています!
松本 入職して7年目ですが、当時と比べても、リハビリテーションの選択肢が変わりました。5年・10年前では当たり前だったことが、今では全然違う、昔の教科書では当然だったことが今の教科書では違うということがあります。だからこそ、常に新しい知識を積極的に取り入れた上で、患者さんに最適なリハビリテーションを提供できるように心がけています。
それぞれに、患者さんに合わせたベストなリハビリテーションを考え、信念をもって実施していることが伝わってくるふたり!話はまだまだ尽きませんが、この続きはまたの機会に…
今後のリハビリテーション通信もどうぞお楽しみに!