昨年9月のリハビリテーション通信で、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」や「ロコトレ」についてお届けしました。近年、数多くのメディアからも「運動をしましょう!」と発信されており、運動をすることの重要性は周知されるところとなっています。
そこで今回のリハビリテーション通信では、「適度な運動ってどれくらい?」というテーマでお届けします。屋外で運動しやすい気候になり、これから何か運動を始めたいなぁと感じている方にぜひ参考にしていただきたいです。
※今回の「運動」はウォーキングやサイクリング(エアロバイク)といった有酸素運動を主体としています
はじめに
一言、運動をしましょうといっても「どれだけ何をしたらいいのか分からない」といった声をよくいただきます。
- 分からないから、なかなか運動を始めることができず、結局何もしていない
- いざ始めてみても「これでいいんだろうか」と疑問に思いながらだと続かない
といった経験はないでしょうか?
いざ運動を始めても、軽い運動だと期待する効果は得られないかもしれません。しかし、強すぎる運動だと体に負担が掛かり、命に関わる病気を誘発してしまうかもしれません。 自分自身の状態に合った運動量を知ることで、自信をもって運動を続けられるようにしていきましょう!少し難しい内容もありますが、「なるほど!」と思っていただけたら幸いです。
運動療法の実際
運動療法は「運動強度」を設定することが重要!(運動強度とは「自分が感じる疲労感」が基本となります)
1.まず、ご自身の「安静時心拍数」を測ってみましょう
心拍数とは、心臓が1分間に動く回数のことです。「安静時心拍数」は文字通り、安静にしている時の心拍数のことをいいます。不整脈がない方は、心臓の拍動1回が体の隅々に脈拍として伝わるため、「心拍数=脈拍数」となります。
つまり、安静時心拍数を測る場合は、図のように手首の親指側にそっと指先3本程度を触れ、脈拍を1分間数えてみてください(30秒数えて2倍にしても大丈夫です)。
脈拍が分かりにくい場合は、「耳の少し前」や「首、喉仏(のどぼとけ)から指3本分横」をそっと指で触れてみてください。
2.カルボーネン法で「目標とする心拍数」を計算
「安静時心拍数」が分かったら、次にカルボーネン法という公式で「目標とする心拍数」を計算することができます。
目標心拍数 =(最大心拍数※1 - 安静時心拍数)× 運動強度※2 + 安静時心拍数
※1 最大心拍数 = 220 - 年齢
※2 運動強度は以下の通りです
40%:軽い運動(脂肪燃焼)
50%:中程度の運動(脂肪燃焼)
60%:少しきつい運動(脂肪燃焼)
70%:かなりきつい運動(持久力向上)
80%:非常にきつい運動(筋力・基礎代謝向上)
90~100%:最大強度(瞬発力・運動能力向上)
目標設定
ここで、何を目標に運動をするのか、ご自身で整理してみましょう
- 糖尿病だし、先生にやせましょうと言われたから体重を減らしたい
- 運動は大切だというし、健康維持のために運動を始めたい
- 体を動かすことが好きだけど、どこまで運動したら良いのか悪いのか分からない
- かっこいい体になるために筋肉をつけたい など
上記以外にも運動を始めるきっかけは、それぞれあると思います。適切な運動を適切な時間、適切な回数で継続していくようにしましょう。
例えば
腰や膝が痛い、先生から体重を減らすように言われた、今から運動を始めようかな?
ということであれば、「体重を減らすための運動」をする必要があります。脂肪燃焼が効率的な運動強度の範囲は「少しきつい運動」が望ましいとされています。
- 70歳、安静時心拍数60回/分の目標心拍数は{(220-70)-60}×0.6(60%)+60=114回/分
60歳の場合は120回/分、80歳の場合は108回/分、85歳の場合は105回/分
- 70歳で安静時心拍数が70回/分の場合は118回/分
- 80歳で安静時心拍数が80回/分の場合は116回/分
数字や計算式を見て、なんだか面倒だな…と思っても大丈夫です。上に挙げた例を見てみますと、だいたい70~80歳で体重を減らそうと思えば、脈拍110回/分くらいを目安にすれば良いと思います。
もちろん、脈拍に関わる病気をお持ちであることや体調が普段と違う場合は注意が必要です。重要なことはあくまでも「続ける」ことですので、あまり神経質になる必要はなく「だいたいこのくらいでいいか」くらいの気持ちで、運動を継続していくようにしましょう。
運動を始めた当初は疲れやすく、筋肉痛を感じることもあると思いますので、「目標が114回だから、今日は90回くらいを目標に始めようかな」といったように、無理なく始められるようにしましょう。
運動をするにあたって最も重要なことは「無理なく」「楽しく」「続ける」ことです
もちろん、「軽い運動」を続けることも重要ではありますが、脂肪が燃えるのにとても時間が掛かり効率的ではありません。
モチベーションを維持していくために必要なことは「少しずつ前に進んでいる気持ち」だと書かれている書物がありました。「今月は20分歩くのを続けられた!来月は21分歩くようにしようかな」「一週間に3回だったけど、水曜日の午後は時間があるし、もう1回散歩に行くのを増やしてみようかな」というように数字が増えていると「前に進んでいる」ことが分かりやすくなるのではないでしょうか?
リハビリスタッフからのメッセージ
以上の内容は一般的なもので、必ずしも全員に当てはまるものではありません。ご了承ください。あくまでも目安にして、不安があれば当院にお越しいただき、リハビリ担当者にご相談いただければと思います。
年齢と共に動きにくくなってくる体を普段から動かして、100歳になっても歩ける元気な体を作っていきましょう!
次回は
“ウォーキング~早く歩いた方がいいの?時間は短くても大丈夫?~” というテーマでリハビリテーション通信をお届けします。
基本的には今回の「目標心拍数」を目安に運動をしていただけたら良いかと思いますが、「脈拍なんて毎回測ったりしない」という方も多数いらっしゃると思います。
次回のウォーキングでは時間と距離、歩き方を主体にお届けできたらと思います。是非次回もリハビリテーション通信をご覧ください!
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