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リハビリテーション通信

「声」からわかること

はじめに

言語聴覚士は、ことばによるコミュニケーションの問題に対してリハビリテーションを行います。口や舌がうまく動かなくなり、自分のことばを相手に聞き取ってもらえないことがありますが、そもそも聞き取りやすい声質であるのかも重要なポイントになります。

声はどのようにつくられるのか

左右の声帯は呼吸をする時は開いています。声を出す時には、左右の声帯が触れ合うくらいの位置まで閉じ、その声帯の狭い隙間を肺から出てくる空気が通ると声帯の内側の粘膜が震えます。この喉頭原音と呼ばれる音波が喉、口、鼻を通過する際に様々な共鳴を受け、声となって発せられます。

声質の異常=嗄声とは?

声帯に器質的な異常がある時、また動きが悪い時には声帯がきれいな振動を行えなくなります。このようにして起こった声がれ、しわがれ声などを嗄声(させい)と呼びます。
嗄声の評価としてGRBAS尺度があります。

  • G(grade):嗄声の全体的な程度
  • R(rough、粗糙性):ガラガラ声、ダミ声などと表現される印象
  • B(breathy、気息性):息が漏れているような印象
  • A(asthenic、無力性):弱々しい印象
  • S(strained、努力性):無理をして発声しているような印象

の5項目からなり、それぞれの項目について0~3の4段階で評価します。

嗄声の原因

① 粗糙性(そぞうせい)嗄声

声帯の震えが左右あるいは前後で不均一な場合に出現します。職業歌手や教師、仕事で1日中声を出している方、タバコの吸い過ぎ、お酒の飲み過ぎの方は注意が必要です。
原因疾患:風邪、喉頭炎、声帯ポリープ、喉頭麻痺、喉頭癌など。

② 気息性(きそくせい)嗄声

声帯の閉じ方が弱い場合に出現します。声を出さない習慣による声帯の萎縮や神経の損傷によって片側の声帯が動きにくくなることで声帯の隙間が大きくなります。
原因疾患:反回神経麻痺、喉頭麻痺、声帯結節、声帯溝症など。

③ 無力性嗄声

声帯の閉じ方が弱く、肺からの呼気が少ない場合に出現します。呼気が多くなると気息性の印象が強くなります。神経筋疾患などで筋肉に力が入らない場合などに起こりやすくなります。反回神経麻痺などでもみられます。
原因疾患:低緊張の機能性発声障害など。

④ 努力性嗄声

癌や瘢痕性声帯のように声帯粘膜が硬く震えにくくなった場合、喉詰め発声などで出現します。過剰に力の入った状態です。
原因疾患:痙攣性発声障害など。

診断と治療

喉頭ファイバースコープというカメラで声帯やその周辺を観察することで診断されます。
治療は原因疾患にもよりますが、ステロイドの吸入などの薬物治療とともに声の出し方の工夫が重要になります。重症の場合は手術適応となることもあります。

言語聴覚士によるリハビリテーション

上述した声の出し方の工夫が主になります。
喉頭炎や声帯ポリープで声帯を休める必要があると判断した時は、できるだけ喋らないことや発声習慣の見直し、腹式発声などで声帯に負担がかからないようにします。
粗糙性嗄声や努力性嗄声のように、声帯の緊張が高いことが原因と考える場合は、あくびやため息に合わせて発声することで声帯の力を抜く練習をします。ハミングも有効です。
反対に、気息性嗄声のような声帯の閉じ方が弱いことが原因と考える場合は、手で壁を押したり物を持ち上げたりしながら発声することで声帯に力を入れる練習をし、無力性嗄声の場合はそれに加えて強く速い息を出す練習をします。

おわりに

加齢による声帯の変化は30歳代から出てくると言われています。加齢による変化に対しては、日頃からよく喋ることが大切になります。しかし、急に起こった声の変化の場合は、思わぬ病気の兆候かもしれません。WORLD VOICE DAYという、声の大切さをアピールする世界的イベントでも3週間以上の嗄声が続く場合は早期の耳鼻咽喉科の受診を推奨しています。
自分の声に耳を傾け、異常の早期発見・早期治療に繋げましょう。

執筆者:言語聴覚士 榎本卓也

当院の言語聴覚士は過去最多の5名になりました。地域の皆様のことばのコミュニケーションや飲み込みをサポートできるよう様々な形で貢献していきたいと思います。

 

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