社会が豊かになり、患者さんが医療機関を選べる時代になっても、変わらないことは「人の心」です。私たちの仕事、医療の対象は「人」です。人の心を動かすのは人の心で、人の感情を豊かにするのは人の温かい感情といわれています。そして、温かい感情は、それを言葉や態度にあらわすことで伝えられます。関根らはそれを表すのがマナーや心配りに充ちた話し方だと言っています。また、マナーはルールに上乗せする「心配り」であり、他人との良好なふれあい、良好なコミュニケーションを生み出す能力です。人の心に届き、人の心を動かすのがマナーであり、社会をよりよくするのはマナーと心配りです。さらに、コミュニケーションの第一歩は声かけや挨拶です。挨拶は相手とコミュニケーションを取りたい、心理的に近づきたいという意思表示です。外来、受付、院内のロビーなどでは積極的に自分から声をかけましょう。積極的に声をかける習慣のある職場は間違いなく明るい職場と言われています。また、「何か出来ることはありますか?」という気持ちで声掛けをしていきたいと思います。
補足になりますが、「ナースのためのマナー・接遇術」(中央法規出版:関根健夫・杉山真知子著)を読んで感動しました。みなさんにも是非一読してほしいので、その一部を抜粋しました。
※「惻隠の情」という言葉について
表に出さず、心を静かに、心の奥底から他人の気持ちを哀れむ。そんな心の働きを「惻隠の情」といいます。「哀れむ」という言葉は、単にかわいそうだという意味ではありません。
他人とのコミュニケーションにおいて「どうしたのかな」「何かあったのかな」「今、ここで、自分には何ができるかな」と考えることで、これはまさに「心配り」です。
口に出し、行動することでこちらの心を理解してもらうことが大切なことは確かですが、一方で口に出した言葉や行動、マナーだけで、その人の心のすべてを表すことはできません。ですから、表には出ないけれど、心を静かに、心の奥底から他人の気持ちを哀れむ、といった思いも常に心に残しておくことも大切なことです。
※職員の機転(心配り)に感心したこと
「いい具合にタクシーが来ましたよ」
認知症のグループホームで管理者をしている友人の話です。入居者である老紳士の〇〇さん、体力もありかくしゃくとしています。彼は毎日知夕方になると「では妻が家で待っておりますから、これで失礼します」と大声で挨拶をし、玄関をスタスタと出ていくのだそうです。職員は後を追い、頃合いを見て声をかけます。
職員「あら、〇〇さんお散歩ですか」
入所者「私はこれから家に帰ります」
職員 「あら、そうですか。いい具合に後ろからタクシーが来ましたよ(実は職員の車です)、〇〇さんお家はどちらですか」
入所者「□□ですよ」
職員 「まあ、あのタクシー、□□行きと書いてありますよ。(手書きで□□行きと書いた紙がフロントガラスの内側に貼ってある)。ちょうどいいから乗っていきましょう」
こうして〇〇さんは車に乗ります。そこら辺を一回りしてホームに戻り、「はい、〇〇さんお帰りなさい。着きましたよ」〇〇さんは何事もなかったようにホームに戻るのでした。
毎日の夕方の出来事だそうです。
職員の機転に感心するとともに、どこかのどかで、映画の一こまを見ているような気持にさせられました。この老紳士と奥様は、仲睦まじいご夫婦だったのでしょうね。
|江藤病院 マンスリーコラム バックナンバー
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営繕について|総務課 設備・車両管理主任 遊亀真吾
認知症とアロマテラピー|2病棟 富永安栄
ChatGPT様!|日下至弘 副院長
心臓弁膜症について|放射線部主任 竹内 浩
防災、減災について |1病棟看護主任 村瀬麻奈美
新年を迎えて|由宇教浩 院長
【2023年】
【2022年】
認知症患者さんへの看護|大和 孝子 副院長
点滴の話|日下至弘 副院長
コロナ感染第7波について|由宇教浩 院長
水分補給で熱中症対策!|藤田光子 看護部長
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地域連携室の役割|日下至弘 副院長
当院での地域医療への取り組み|由宇教浩 院長