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医薬品の供給不安定について|薬剤室

医薬品の供給不安定について

最近、ニュースでも話題になっています。

どうしてこんなに薬が不足してしまうのか。

きっかけや理由について整理し、薬剤部としてできることを考察してみました。

医薬品供給不安定のきっかけ

医薬品の供給が不安定になったきっかけは、2020年に起きた抗真菌薬に睡眠薬が混入してしまった事件です。日頃、調剤に従事している私たち薬剤師にとっても、驚きを隠せない事件でした。事件が起きた原因に、不適切な製造や品質管理の不正がありました。

これを期に、国や都道府県が製薬会社に対して立ち入り検査、自主点検を実施したところ、複数の製薬会社で問題が見つかりました。業務停止命令や業務改善命令が発令され、医薬品の製造、供給が停止され、出荷調整が行われるようになりました。

供給不安定な原因

輸入に頼ってきた医薬品の原材料が、コロナ禍の影響も加わり調達が難しくなり、医薬品の製造がさらに困難になっていることも原因です。

コロナ禍前の2018年にも抗菌薬のセファゾリンが供給不安定になり、医薬品の供給について厚生労働省の関係会議が開かれたことがあります。原薬を輸入している海外企業の異物混入、原薬出発物質の製造中止が重なり、セファゾリンの日本市場シェアの60%を占めていた製薬会社で製造が中止され、代替薬も品薄となりました。重要な薬剤を海外生産のみに頼り、かつ供給のほとんどを一社が賄っていたという体制が疑問視され始めました。主要学会の4団体から医薬品の供給体制の構築や代替薬についての提言がなされ、その結果、セファゾリンを含めた主要抗菌薬数種類の薬価がやや引き上げられました。海外での製造のみに頼らず、国内産原料をもとに国内で生産される薬剤の確保をするためには、設備投資を含めた採算割れをしない薬価とする仕組みが必要ですが、充分な体制の実現には至っていません。

これが行われたのは2020年。まだ医薬品の安定供給に対する策が不十分な状態でのコロナ禍への突入でした。

薬剤部でできること

薬剤部の役割は、必要な薬剤を安定して入手することです。そのため常々、メーカーからのお知らせや医薬品流通に関する情報を確認し、前もって代替薬を準備して対策をしています。しかし、ジェネリック医薬品は複数社が同じ成分を販売しており、1社で出荷停止が起こると、他の会社に注文が殺到してしまいます。需要量が生産量を上回る場合、均等に医療機関に薬が届くように、メーカーは出荷量を調製せざるを得なくなり、医療機関では新規購入や購入量の増加ができなくなります。薬剤部は、流通が不安定な薬剤の調達について、毎日医薬品卸やメーカーに相談し、薬の入手に悩んでいる日々を送っています。

どうしても入手できない場合は、外来患者様にはご了承の上、院外処方とさせていただくことがあります。江藤病院では購入ができない薬剤があるため、近隣の調剤薬局さんに調剤をお願いしています。近隣の調剤薬局様にはいつもご協力いただき、本当に感謝しております。また、患者様にはご不便をおかけしていますが、ご理解いただきありがとうございます。

ポリファーマシー対策の推進

入院患者様には、基本的に江藤病院の採用薬内での対応となるため、薬が購入できないと非常に困ることになります。ここで、当院で以前より進めているポリファーマシー対策の考えが役に立ちます。本当に必要な薬なのか、減らすことはできないのかを検討することで、漠然とした薬の使用がないよう努めています。入手困難な薬を手に入れようと努力しているけれど、実はそんなに重要ではない場合があります。また、入院中の場合、生活リズムや食事内容など管理されているため、中止できる薬があります。

チーム医療の推進

薬を使わない治療法を非薬物療法といいますが、これには他職種の働きかけが必要不可欠です。例えば、リハビリによって鎮痛剤を減らすことができたり、血液中の電解質が足りない場合、食事で補給することで補うことができたり、献身的な看護のおかげで昼夜逆転の生活が改善され連日飲んでいた睡眠薬が必要なくなったり。薬が減ったことで笑顔で退院された患者様が何人もいらっしゃいました。薬だけを見るのではなく、患者様と、他職種とともに治療に携わることが重要だと痛感しています。

まとめ

まだ医薬品供給の見通しは不透明で、今後も不安定な状態が続くことが予想されます。ですが、今後もさらにポリファーマシー対策に力を注ぎ、他職種と連携を取りながら治療に取り組むことで問題を解決できるのではと考えています。

 

江藤病院 薬剤室

 

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