近年日本において超高齢社会が継続し、今後も高齢化が進行する状況です。厚生労働省が発表した2022年分の平均寿命は男性が 81.05 年、女性が87.09年で、90歳まで生存する人の割合は男性25.5%、女性49.8%となっています。また2022年の死因順位は、第1位:悪性新生物(腫瘍)、第2位:心疾患、第3位:老衰となっています。
当院の入院病棟3階は医療療養病棟で、人工呼吸器や頻回な喀痰吸引が必要など、様々な医療・看護が常時必要な患者様が入院されており、最期の時を当院で迎える方も少なくありません。その最期に行う看護行為がエンゼルケアです。
エンゼルケアとは、死後に行う処置、保清、エンゼルメイク(死化粧)などの全ての死後ケアのことで、逝去時ケアとも呼ばれています。
一般的な内容としては、医療器具を外した後の手当、傷の手当、身体の清拭、鼻・口・耳への脱脂綿詰め、着替え、エンゼルメイクなどが挙げられます。最近では鼻・口・耳への脱脂綿詰めは行わない病院もあり、当院も基本的には行っておりません。
エンゼルケアの意味や目的として大きく3つ挙げられます。1つ目は患者様の尊厳を守ることです。闘病の末に病院で亡くなる患者様は、入浴ができず身体や着衣が汚れていることがあります。人生最期にそのような姿で旅立たなくてはいけないのは、人間としての尊厳を守ることができません。人生の最期をその人らしくいられるように、身体の清拭を行い、患者様によってはお気に入りのスーツや着物に着替えて退院される方もおられます。2つ目は感染予防です。患者様の体液や血液が漏出して感染させる可能性があるため適切に対処する必要があります。3つ目にご家族の心のケアです。闘病により患者様が以前と違う容貌になり、ご家族にとってその姿を見るのはとても辛いことです。少しでもその人らしい外見に整えるようエンゼルメイクを行います。化粧は女性だけでなく男性にも行います。化粧をすることで乾燥予防や皮膚色の調整、血色を出すなどの目的もあります。
当院のエンゼルケアでは、ご家族にお声掛けをし、希望があれば一緒に身体の清拭や着替えを行うこともあります。ご家族にエンゼルケアへの参加は強要しませんが、その人との最後の関わりとなりますのでご一緒にケアをしてみてはどうでしょうか。
医療療養病棟 主任看護師 脇岡真司
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